ミズラン(Mizlin) Part.80
ミズラン(Mizlin)。これは、ミシュラン(Michelin)と私の名前をもじったおいしいお店紹介のコラムです。
馬肉料理 みの家(みのや)
住所:東京都江東区森下2丁目19番9号
TEL:03-3631-8298
意地が悪いようですが、おいしいところをお教えする以上、この情報をもとにご自身で探してみてください。
学生時代にこちらのお店を知り、いつか行きたいと思いつつも、月日は容赦なく過ぎていき、そしてやっと今回訪ねる機会を得ました。
感激です。
こちらは、明治30年(1897年)創業の馬肉料理のお店です。
隅田川や小名木川の海運業の発達に伴って賑わいを増していた深川森下町で、木場の職人や船人足のスタミナ食として供されたのがはじまりだそうです。
この界隈は、一昔前までは足の便があまり良くありませんでしたが、今では東京メトロ大江戸線や半蔵門線、そして都営新宿線の駅ができ、本当に便利になりました。
さて、お店ですが、店構えからして見るからに老舗の風格があります。
玄関を入り靴を脱ぐと、下足番のおじさんが札をくれます。
それだけでも、最近はまず経験できないことです。
そして、1階の磨き上げられて清潔感溢れる大広間に通されると、正面に特大の熊手と大きな時計が迎えてくれます。
そして、ガスコンロが適当な間隔に設置されたステンレスの特注長机が2列、大広間に並んでいます。
この長机に「入れ込み式」と呼ばれる連れ同士が机越しに向かい合い、隣には他のお客が座るといった具合に座ります。
そして、お料理です。
まずは、こちらの登録商標にもなっている「桜なべ」を頂きました。
お鍋は、底の平らで浅い真鍮製で、割り下を注ぎ火を点けると、すぐに煮立ってきますので、まずは脂身を入れ、そして特製味噌のかかった馬肉を入れ、さらに一般には出回らないというねぎに、糸こんにゃくを加えます。
馬肉は、刺身にしても良いほどの新鮮なものですから、あまり煮込まず頂きましたが、割下や特製味噌を加えていても、しつこくなく実に美味です。
そして、肉さし(馬刺し)とあぶらさしも頂きました。
肉さしは、赤身でやわらかくまたしっかり味があって本当においしいお肉でした。
あぶらさしは、いわゆるたてがみと呼ばれる馬の首筋のお肉で、一見真っ白な脂のようですが、決してくどくはなくさっぱりとしています。
その他、板わさ、玉子焼、お新香なども頂きましたが、どれも、実に酒に合う一品ぞろいで、思わずうれしくなりました、
おもしろいお約束事がありました。
お手洗いが大広間の左手奥にありますが、そこに行くのに、熊手のある奥に向かって大広間を真っ直ぐ突っ切るのではなく、大広間の左右にある廊下を迂回して行くのが、暗黙の了解事項とのことでした。
お店のしほりに寄りますと、池波正太郎原作「鬼平犯科帳」の主人公「長谷川平蔵」の住居跡は隣町、松尾芭蕉の住居跡や赤穂浪士が討ち入りした吉良邸跡も近くということで、まさにお江戸のど真ん中のお店でした。