暁の南アフリカの逆襲
私がいた銀行のディーリンチームは、いろいろな通貨ペアで非常にアクティブに動いていて、結構有名でした。
そんなチームがある時狙ったのはUSD/ZAR(ドル/南アフリカ・ランド)でした。
毎日、南アのヨハネスブルクにある地場の銀行をディーリングマシーンで呼んでは、大玉で投機的に売り買いした結果、結構な儲けになりました。
ところが、ある日の午後、現地時間の早朝、まだロンドンがオープンする前のマーケットが薄い時間帯に、南アの地場銀行が、次から次へとこちらを呼んできて、USD/ZARの大玉プライスを求めてきました。
インターバンクにはリサイプロベースと言って、片方がプライスを出す以上は、もう片方も相手にプライスを出さなければならないという不文律がありますので、いつも先方にプライスを求めている以上、出さないわけにはいきません。
その結果、プライスを出せば、たたみかけるように同方向に叩かれ、コテンパンにやられました。
後でわかったことですが、実は、南アの地場銀行のディーリングルームは、当時、皆同じビルに入っていました。
そのため、地場銀行同士が最近日本の銀行に毎日呼ばれては叩かれていることを、「おまえもか」とお互いに知るのにそれほど時間は掛りませんでした。
そして、これは、一度その銀行をこらしめてやろうと話がまとまり、作戦は練られ実行に移されたということでした。
これを、我がチームでは、「暁の南アフリカの逆襲」と呼んで、後々まで語り草となりました。