識者の来年予想の落とし穴(うさぎとカメ)
年末になると、来年の見通しが、多くの識者と呼ばれる人たちから語られ、マーケットも大いに盛り上がります。
しかし、こうした識者の見方の中でも、大勢となる見方は、良く外れるというのが、ジンクスというより、ある意味当然のことです。
なぜなら、こうした見方というものは、来年に対するイメージの先取りですから、実際の資金の流れが伴っているわけではありません。
そんな中で、大勢の意見という、投機筋の期待感が単に膨らんだ結果として、大勢のポジションが一方に大きく偏るわけです。
こうした投機筋の期待感からポジションが一方に偏ることを、個人的には投機要因と呼んでいますが、年間の中でも、この年末の来年こそはと気合が入った時期が、投機要因が最も膨らむ時期だと言えると思います。
なおかつ、最近の海外投機筋の傾向として、AIにトレードを頼るようになってきており、相場の見通しをAIを使って力任せに実現させようとするため、相場が強引に大勢意見の方向に持っていかれがちになります。
ですから、あたかも、大勢意見通りに相場は動くことになります。
しかし、いくらパワフルなAIといえども、投機筋の宿命から逃れることはできません。
つまり、売れば損益確定のためには後で必ず買わなくてはならない、あるいは買えば損益確定のために後で必ず売らなくてはなりません。
結果として、相場は往って来いのレンジ相場になってしまいがちです。
もちろん、相場にはトレンド相場があります。
これは、実際に資金が、たとえば円からドルへ移動を続けることによって起きます。
現状で言えば、日本の実需のドル不足からの平日毎日仲値決めに向けて起こるドル買いといった、いわゆる実需要因や、日本の個人が日米金利差が政策金利で5%を超えていることからドルで運用することに魅力を感じ円からドルへ資金を移動させているといった資本要因などがあります。
こうしたフロー(資金の流れ)は、日々出ているもので、今止まる気配はありません。
しかし、目先で投機要因によって相場が動くと、心が揺らぐことと思いますが、投機要因の特徴をよく覚えておくことが必要です。
つまり、投機要因の相場は、確かに短期的にはかなりの破壊力があります。
しかし、持久力がありません。
なぜなら、投機筋には、既に申し上げましたように、たとえば、売れば必ず後で買い戻して損益を確定しなければならないという宿命があります。
したがって、地味な実需および資本要因に、派手な投機要因はなかなか勝てず、結果として年末の識者の来年の見方はあまり当たらないということになります。
たとえていえば、うさぎとカメの競争のようなものが、投機要因と実需・資本要因の関係だと言えます。