05-10(プライスのはずが)
ディーリングの現場にいると、緊張感がありますが、逆に笑えるような一幕も結構あります。
そういったエピソードをひとつお話してみたいと思います。
私がニューヨークにいた時の話ですが、当時まだ大口の注文をこなすために、インターバンク同士で直接他の銀行を呼んでプライスを求めるダイレクトディールが盛んな頃でした。
ある時、顧客からの大口注文が入り、アシスタント達は、一斉に他の銀行にディーリング・マシンや電話でプライスを求め、どこの銀行も05-10(ファイブ・テン)とプライスを出してきたため、アシスタンス達は、私に向かって、「ファイブ・テン!」「ファイブ・テン!」と連呼し、私も、全部買えと指示しました。
そして、ひと騒動が終わったところで、買った本数を確認したところ、10本(1千万ドル)足りないのに気がつき、各自に買った本数を確認しました。
そうしましたら、あるのんびり屋のアシスタントから、「ノー・アイデア(知らない)」という応えが帰ってきました。
「いや、君がファイブ・テンとクォート(提示)したのは、憶えているけど」と私が言いましたところ、そのアシスタントの返事が振るっていました。
「私は、Nori(私のこと)に外線から電話が入っていたので、内線510(ファイブ・テン)と叫んだだけです」と言うのでずっこけてしまいました。
プライスを私に伝えようと、皆が「ファイブ・テン!」「ファイブ・テン!」と大騒ぎしている中で、その場の雰囲気に無頓着に内線510(ファイブ・テン)を叫んでいたとは、返って大物かと思った次第です。