全部買った!、全部売った!(Your amount)
電子ブローキングが活発になる以前、人間のブローカー(仲介業者)さん達には大変お世話になりました。
顧客から大口の注文が入ると、スピーカーボックスを通じて、ブローカーさんに、「全部買った!」とか、「全部売った!」とか叫んで処理していました。
しかし、「全部買った!」とか、「全部売った!」は、大変危険な言葉で、英語で「Your amount」(あなたの金額を全部引き受ける)という意味です。
実際、ロンドンにいた頃、USD/CHF(ドル/スイスフラン)で米銀大手ロンドン支店がスイス系銀行のチューリッヒ本店に、ブローカー経由で「Your amount」を実際に言ったところ、とんでもない額ができてしまい、泣く泣く米銀は引き受けロスカットしたことが、マーケットでも話題になりました。
東京にいたある日、やはり顧客から大口注文があって、4社のブローカーさんに「全部買った!」を同時に叫んだところ、4社とも同額でできて、きれいに注文がカバーできたことがありました。
しかし、後日あるブローカーさんから聞いたところでは、あの時売ってきていた銀行もいくらでも売るという状況で、咄嗟に両者が納得する金額を決め、取引を成立させたそうです。
これは、他の3社でも状況は同じで、そのため、4社すべてが同額の取引額を成立させ知らせてきたもようです。
このあたりが、まさに、日本人らしいきめ細やかな配慮だと思いましたが、それ以上に自分の甘さ・至らなさを感じ、それ以来、「全部買った!」、「全部売った!」は一切やめて、希望する金額をはっきりと言うことにしました。
これが、海外なら、とんでもないことになっていただろうなと、今でも冷や汗が出ます。