Oh, boy!(値動きから感ずることを信じる)
私が、ニューヨークに駐在していた頃、トレーディングでいろいろな経験をしました。その中でも、忘れられないエピソードを今回お話ししてみたいと思います。
ある時、大台は忘れましたが、たとえば、ドル/円の150.00以上には、日本の輸出企業からの売りオーダーが死ぬほどあって上は鉄壁だと、マーケットでは言われていました。
しかし、なぜかプライスは、徐々に、その150.00に吸い寄せられ、149.90-00近辺で保ち合い状態になって、どう見ても買い気が強い状態になっていました。
そこへ、日本のお客さんから、私の直通番号に電話があり、挨拶もそこそこに、「お騒がせしますが、ドル/円で200本プライス(2億ドルのツーウェイプライス)をお願いします。」とのことでした。
200本(2億ドル)と言えば、1銭アゲンストで2百万円、10銭アゲンストで2千万円のロスがでるサイズです。
瞬間的に、自分が感じる買い気の強さとマーケットで言われている150.00以上の死ぬほどあるという売りオーダーを比べてみて、ここで売ってこられても逃げられるが、買ってこられたら逃げられないと自分が値動きから感じる強さを信じ、マーケットが149.90-95のところで、149.95-00でプライスを提示しました。
そうしましたところ、そのお客さんは、「マイン(Mine、買った)」とおっしゃって取引は成立。私は、200本のショートを持ったわけです。
お礼を申し上げて電話を切るなり、私のアシスタントのアイルランド系アメリカ人のデニースに、「I need 200!(200本買わなくちゃならない!)」と言うと、今まで私が日本語でボソボソ電話していたので、そんなことになっているとは知らなかった彼女は、「Oh,boy!(えー!)」と叫びつつ、「Hey, guys(みんな、聞いて!)」 とチームの連中に大声で指示し、他の銀行をディーリングマシンや電話で呼びまくりました。
そして、チームのみんなが伝えてくる他の銀行の出してくるプライスを、私は買い捲りました。
積極的にリスクをとることで有名な銀行、バンカーズトラストなどは、呼び返してきて、「What's your price?(おまえのプライスを出してみろ)」と、挑みかかってくる有様で、なにしろ大騒ぎのうちに、200本を無事買い終わりました。
その間、プライスは、149.90-00の間で動いていませんでしたが、買い終わってしばらくして、地鳴りがしたような気になるほど、ズズズーッという感じで150.00を上に抜け出し、それからは速かった。ものの30分掛かるか掛からないかのうちに、2円ブチ上がったのでした。
このエピソードから申し上げたかったことは、噂や世間の見方に頼り過ぎないで、自分がマーケットの値動きから感ずることを信じることが大事だということです。
そして、自分を信じるためには、痛い目に遭ってでも、いろいろ経験を積むということが大事だと思います。