潮時(しおどき)
プロのディーラーは、月間収益目標を達成したら、その月の残りは、ポジションを持たなくなることがあります。
これにも一理あって、私自身、目標を達成したら休むことの重要性を実感したことが、過去にありました。
それは、ニューヨークにいた頃で、たまたまドル/円を大きくロングにしていた日でした。
しかし、上値が重く、どうもおかしいとロングをやめ、それならショートで行こうと買ったポジションと同額のショートポジションを作りました。
それから、30分ぐらいして、急にドル/円がスルスルッと下落を始めて、なにが起きたのかと、ロイターのヘッドラインを見たところ、ニューヨーク連銀(NY FED)が、ドル/円でドル売り介入したと報じており、本当にびっくりしました。
あまりに唐突なFED(フェッド)のドル売り介入は、マーケットにとっても驚きで、パニックとなりドル/円は急落を続け、それから数時間後に始まった東京市場ではさらに過剰反応となり、介入実施時の水準から5円以上の急落となりました。
その時点で、やはりドル/円をもともとショートにしていた上司が「こんなラッキーなことはない。全部利食おう」という一言に、私も異論はなく、全部買い戻しました。
ところが、良く東京にありがちな、下げたという結果が出てから、戻り売りを東京勢は実際行ったため、ショートポジションが急激に膨らみ、その結果、下がるどころか上げ始め、結局、ショートの損切り的な買戻しを巻き込んで、翌日にはもともとの介入水準まで戻してしまいました。
一方、我々は、ラッキーとばかりに東京時間に全部利食ったことで、なんと半期(半年分)の収益目標を達成してしまい、その半期の残りは、ポジションを持たないということにしました。
そのポジションを持たない期間、日本へ出張し取引先を訪問したりして過ごし、次の半期への英気を養いました。
いくつか、このことから言えますが、ひとつには、やはり儲かってラッキーと未練残さず利食うことが大事です。
言い換えれば、勝つも負けるも、潮時が肝心だということです。
また、結果が出てからの戻り売りや押し目買いは、同方向のポジションがマーケットで急速に積み上がりやすく、危険だということです。
そして、休むことで、欲望や悔しさを忘れ、改めて平常心を持ち直すことができると考えています。